現状維持バイアスは諸悪の根源か?

現状維持バイアスは認知バイアスの1つ。今までやってきたことと、新しいこと。どっちをとるかという選択に迫られると、どちらも同じ確率で良い悪いの結果がえられるという状況だとしても、人は今までやってきたことを選んでしまいがち。

私自身は、おそらく他の人と比べると、現状維持バイアスがもともと低いのではないかと思う。前世は破壊神だったのかもしれない。

科学者はみんな新しいことやるはずだから、現状維持バイアスは低いはず。と思うかもしれないが、実際はどうか? 私の経験では、科学者は一般に、ある特定の分野、特に自分が専門とする分野に関しては、現状維持バイアスは少ない、かもしれないという印象がある。しかし、一歩自分のcomfort zone を出た途端、ゴリゴリの現状維持バイアスの権化みたいな人は多い。全般として、現状維持バイアスの度合いは、おそらく、他の職業の人と変わらないのではないか?

現状維持バイアスは、長い間の狩猟採集民時代に脳に刻み込まれたのだろう。他の認知バイアスも多くがそうだと考えられている。現代の人類学では、~200万年から1万年前という長い期間、人類は似たような生活を送っていたと考えられている。そんだけ時間があれば、狩猟採集民としての環境に合うような人が生き残ってきたはず。

狩猟採集民だった時は、新しいこと vs 現状維持という選択を迫られたら、多く場合、現状維持の方が有効だったんだろう。フグとか毒キノコ食べたりしたら死ぬし。新しく入ってきた人が「これ良いよ」って言ったからって「うちにはうちのやり方がある!」ってのが有効だったんだろう。

ただ、現状維持バイアスは現代、特に最近では破綻している。個人、家庭、集団、組織、それ以上、それぞれのレベルでの問題の大きな原因の一つはこれだと思う。(逆に解決の仕方もわかっているから、未来は明るい)。

現状維持バイアスが、現代人に全くフィットしない理由は少なくとも3つ。

第一に、科学のおかげで、さまざまなアイデアが replication 可能な形で、効果量も測定できるレベルですでに試されていること。registered report, meta analysis, structured review などの比較的新しいやり方のおかげで、この動きはますます加速している。新しいやり方が上手くことがある程度、統計的に保証されていることが多い。Daigo氏や鈴木祐氏の本はそういう結論をまとめてくれている。

第二に、新しいことを試して失敗する時のコストは、狩猟採集民の時に比べて激減していること。大概の新しいことはトライしても死なない。

第三に、めちゃくちゃ多くの新しい手法、しかもそのAlternativesを簡単に知れる。情報の溢れ具合は半端ない。

なので、今の問題点・改善可能なポイントを洗い出し、現状維持バイアスに反抗して新しいことを試し、良かったら新しい方法を残す、というサイクルを回すと、色んなレベルで問題が解決・改善すると思う。なんて明るい未来!?

この方法で、最近は私自身は少なくとも、どんどん改善していけている感じがしている。目標は、毎日昨日の自分を恥ずかしく思えるようにすること(=成長)。

こういう思想は、どうやって家族・私のグループ・私の所属するグループを含む組織に共有してきたい。それができるかどうかが今後の課題。

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