Register report について:文系学問で registered report するのは無理なのか?

うちのラボでは、ここ数年、できる限りの実験系論文・データ解析系論文をregistered report 方式でPublishすることにしている。現時点(2021年11月)で、すでにPublishされたのは1本。Stage 1 acceptance が2本、Stage 1 のunder review が3本。準備ができつつあるのが2本くらい。

Registered report を何本かやってみて思うことは色々ある。まず、理屈や現時点でわかっていることを総決算して新たな予言をたてて、それを検証するっていうこの枠組は、本当の科学の姿だよなーといつも思う。

殆どの科学者は、仮説があって実験を始める。が、出てきた結果に合うように、最初の仮説を曲げて平気な顔して論文書く人がいる。(そういう人はPhD剥奪したらどうか?)。しかも、あたかもその曲げた仮説が最初からの仮説だったかのように振る舞って。

こういう態度の根本には、他人に「間違った仮説を立てた科学者」というラベルを貼られることに対しての恐怖感があるのではないかと思う。なんで間違ったこと言うのが嫌なのかが私には100%理解できない。間違った仮説が間違っていたということがわかることがProgressじゃん。

これに関してはRegistered Reportよりも大分前のレベルのPreprintでも思うことがある。共著者の中には、Preprintの中に、間違いが含まれていた場合、それが世界に広まってしまったらどうしよう、と心配する人がいる。大丈夫、あなたの些細な間違いなんて誰も気にしない。

というかそういうことを気にする精神構造、そういう精神構造を持つ科学者を作り上げた世界の構造が問題だ。そこまで行くと、この問題は理系の科学者だけにあてはまる問題じゃないと常々思う。日本だけの問題でもない。これは「間違えたらやばい」という認知バイアスの問題だろう。

で、題名にもある通り、文系の学者もRegistered Reportすればいいという発想にたどり着く。別に、検証できない予想とか予測だって、フェルマーの予想みたいに、価値がある予想だったらかなり世界が変わると思う。今の世界、うまい具合に仮説たてれば、たくさんの文系の学問における仮説は、低コストで検証できると思う。

くだらない、面白くない予測・予想はしてもしょうがない。そういうのを連発する人は、検証されて、無視されたらいい。そのうち、Google Scholarの新機能として、過去のRegistered Reportのインパクトとかが簡単に検索できるようになるだろう。そうすると、間違った仮説の中に、価値があるものとないものがクリアになるのでは? 他の科学者をインスパイアする予想がたてられるなら、たとえそれが間違えてても、検証できなくても、超長期的には価値がみとめられると思う。

「文系の学問でRegRepやれると信じるなんて馬鹿じゃない?」と思われる人もいるかもしれない。確かに、従来は「一回性の出来事」「個人の感性・主観」を相手にする芸術とか文系の学問においては、普通の理系や医薬系がやるような「統計的な」科学手法にはのらないかもしれない。でも、私ら、意識の科学やってますし。。。今やビッグデータ活用とかすれば、相当なレベルで一回性の科学を追求できそうな気がしている。

この前の論文で出した intersubjective agreement という概念はそれに向けての一歩になるかなと思っている。

Chuyin, Z., Koh, Z., Gallagher, R., Nishimoto, S., & Tsuchiya, N. (2021, October 7). What can we experience and report on a rapidly presented image? Intersubjective measures of specificity of freely reported contents of consciousness. https://doi.org/10.31234/osf.io/d2s38

Author: Naotsugu Tsuchiya

Trying to find the physical basis of consciousness and to optimize my life habit amap. Please subscribe our lab's Youtube channel http://tinyurl.com/ue3vayzr.l

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